ダブルホイール脱進機により、平均太陽時と真太陽時をそれぞれ別表示し、さらに均時差を知らせる懐中時計。

 バージョンでさえも非常に複雑で、それぞれが製作に数十年の歳月を要している。この注目すべき時計はブレゲの死後、1836年にオルレアン公爵に売却されたが、その製作はブレゲがまだ存命で工房を監督していた1790年代半ばに始まったと考えられている。

 この特別なパンデュール・サンパティークは、その機械的創意工夫のみならず、1970年代にパリのアンティークショップでムーブメントの部品が多数欠落した状態で発見された後、ジョージ・ダニエルズによって大幅に修復され、復元されたという事実により、さらに存在が際立っている。

「科学的時計学の努力の森の中で、場違いな創造力に満ちた宝石であり、その存在そのものに驚きと謎は尽きず、製造するに十分な理由がある」

 さらに、フランソワ-ポール・ジュルヌとミシェル・パルミジャーニの両氏は、私との会話の中で、パンデュール・サンパティークが「人類史上最も独創的な時計学的発明」であると明言した。現代の時計業界において最も尊敬されている3人がパンデュール・サンパティークのステータスについて同意しているのだから、この時計が保存されるべきものであることは間違いない。


 この40年ほどの間は、クォーツ革命後の時代であり、機械式時計製造が計器を作る手段としてではなく、芸術、工芸、デザイン、あるいは単なる商業的動機の表現として復活した。

 その結果、多くのロレックス N級時計が考案されたように見えるが、重要な時計はほんのひと握りであることはほぼ間違いない。重要な時計とは、後に続くウォッチメーカーたちに影響を与え、また大きな影響を与えるウォッチメーカーたち自身も同様に重要な時計と見なしている時計を意味している。

 そこでは、インディペンデントウォッチメーカーが重要なタイムピースの多くを占めており、これはウォッチメーカーが企業組織の枠から自由になったときの創意工夫と解き放たれた独創性を示している。

 ジョージ・ダニエルズの懐中時計、「ザ スペース トラベラー」は、明らかに多くの時計愛好家やウォッチメーカーが崇拝する時計である。ダニエルズがすべて手作業で製作したこの時計には、彼が開発したダブルホイール脱進機が組み込まれており、ふたつの輪列によって、真太陽時と平均太陽時の時間表示が個別にできる。さらにダニエルズは、この時計の便利さを倍増させるため、クロノグラフ機構を追加した。


ダブルホイール脱進機により、平均太陽時と真太陽時をそれぞれ別表示し、さらに均時差を知らせる懐中時計。また、クロノグラフとムーンフェイズ、年次カレンダーも併載される。ジョージ・ダニエルズが全てのパーツを手作りしたことで特に評価が高く、2017年のサザビーズによるオークションでは319万6250ポンド(当時のレートで約4億6000万円)で落札された。

 腕時計の中ですぐに思い浮かぶのは、F.P.ジュルヌの「クロノメーター・レゾナンス」である。その前後の多くの偉大な作品と同様、クロノメーター・レゾナンスも歴史的な偉人、すなわちブレゲとアンティド・ジャンヴィエの作品に着想を得た(インスパイアされた)ものだ。彼らはともに共鳴の原理で動作するタイムピースを製作し、レゾナンスクロックを作り上げたが、ブレゲのみがレゾナンスの懐中時計を組み立てた。


ふたつのテンプを共振させることで、等時性を高めるクロノメーター・レゾナンスの第5世代。1秒ルモントワールを搭載することも含め、基本的なメカニズムは先代と変わらないが、香箱がシングルに改められている。また、2時位置と4時位置の2カ所にリュウズを設けるなど、より対称性を強調したデザインが採用された。

 しかしながら、フランソワ-ポール・ジュルヌは、現代において初めてレゾナンスを腕時計で実現した。スリムでコンパクトなケース、シンメトリーなムーブメントと文字盤を備えた、他の追随を許さない彼のスタイルで成し遂げられたクロノメーター・レゾナンスは、ブレゲのレゾナンスに着想を得ながらも、オリジナルであるとすぐに分かる異彩を放つ美を備えている。


 クロノメーター・レゾナンス以外にも、ジュルヌはもうひとつ、偉大な発明をしている。それはアメリカの映画監督フランシス・フォード・コッポラの提案によって考案された「FFC」である。人の手の5本の指で時刻を示す、おそらく史上唯一のタイムピースであるFFCは、コッポラの前代未聞のアイデアに挑み、それを実際に実現したジュルヌの天才的な革新性と専門的熟練を示している。ジュルヌはほぼ間違いなく、クロノメーター・レゾナンスやFFCのような時計が示しているように、ひとりのウォッチメーカーとしてその生涯で稀有な偉業を成し遂げた。



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